うちの弟がモテすぎて困る。
「あのさ!」
「うるせーな」
不機嫌な結月の声。
本当に昼間とは大違い。あんなに大人しくケーキを食べて紅茶を飲んでいた人とは思えないほど。
「これは確認というか疑問というか……あんたに聞きたいことがあるんだけどさ」
「………」
サッカー中継ではちょうど日本チームが一点決めていて、このリビングとは真逆の盛り上がりをしていた。
私は意を決して水を一気飲みした。そして。
「し、志穂のこと好きなの?」
なぜか私が動揺して噛んでしまうところだった。
この位置からだと結月は頭しか見えなくて、動揺した素振りも慌てる様子も一切ない。
やっぱり私の思い過ごしか……とコップを流し台に置いたところで、やっと返事が返ってきた。
「本人には言うなよ」
私はまるで忍者のように結月の元へ。
「ままま、まじで?え?好きなの?いつから?え?最近?それとも昔から?」
ラップのようにリズミカルになってしまったけど、結月は別に突っこんでこない。
むしろ表情ひとつ変えずにいつも涼しい顔をしてるのに、結月の目が泳いでいる。
「待って。わかった。とりあえず落ち着こう」
「てめぇがな」
口の悪さは変わらないけど、私はスッとその場に座った。
しかも正座でソファーに寝転がる結月に反省を強いられているような格好だけど、これは一大事だから正座だよ。