それでも君が好きだった
綺麗なオトコノコ
「こんにちわ」
男のくせにか細い声。
初対面なワケではないが話すのは初めてだった。
「こ ん に ち わ」
わざと大きな声で答えるあたしは相当ひねくれてる。
「あの…麻美ちゃんだよね?
お兄さんから話聞いてる。」
「へえ、どんな?」
オニーサンなんて面かよ、あんなヤツ。
「…え」
困った顔しちゃってさ、
分かってるよ
うちの兄ちゃんがあたしのイイ話をするはずがないってこと。
「もーいいよ
あがれば?
兄ちゃんなら二階。」
玄関で所在なさげにうつむいてるヤツに救いの手を差し伸べてやった。
「ありがとう」
「ど う い た し ま し て」
あたしのイヤミも知らぬ顔で階段を上がっていくそいつ。
「あ…、おい!」
あたしは線の細い背中に向かって言う。
ヤツはゆっくり振り返る。
「あたしはあんたの名前聞いてないけど?」
少し驚いてような顔でそいつは言った。
相変わらず、か細い声で。