それでも君が好きだった
「中森悠斗、…です。」
そう言って微笑んだ顔は凄く凄く綺麗だった。
ガラスみたいだと思った。
少しの間、言葉を忘れた。
再び階段を上り出すそいつの背中に、
「似合わねー名前」
やっとの思いでぶつけた言葉。
「でも、これが僕の名前」
振り向きもせず、答えた声は心なしか弾んでいたような気がした。
すぐにその背中は見えなくなって、
二階からは兄ちゃんの馬鹿みたいにでかい笑い声が聞こえてきた。