それでも君が好きだった
「なんで兄ちゃんなんかと友達なんだ?」
週に一度、決まって水曜日に悠斗は家に来た。
あたしたちは玄関でなんとなく話しをするのが恒例と化していた。
「店によく来るから…うーん、答えになってないね。」
「だね。」
店、とは名古屋大須にあるEmRという古着屋のこと。
悠斗はそこで働いてる。
「理由なんてないでしょ?人をスキになるのに」
悠斗はそう言って微笑んだ。
「おっしゃるとおりで」
そりゃそうだ。
あたしも理由なんて分かんないし。
「じゃあ、僕行くよ。」
「ん、バイバイ」
そう言って二階に消えてしまう悠斗。
あたしはまだ気付いていなかった。
悠斗のスキ、は
あたしの好き、と
何ら変わりのなかったことを。
ずっと気づかないままでいたら良かったと思う。