それでも君が好きだった
「ペペロンチーノ激安…」
あたしはまったく選択肢に入っていないメニューの値段に無意味に小さな驚きを覚えながら、
向かい側に座る悠斗をチラリと見た。
「明太スパとカルボナーラ、どっちに…」
悠斗は窓の外を見ていた。
ただ一心に、一点を見つめていた。
「…悠斗?」
その横顔を見ながら、あたしもきっと同じような顔で
家の階段を登っていく悠斗の背中を見ているのだと直感した。
「おい!」
「え?…あ、決まった?」
「ペペロンチーノ…」
「へえ、またなんで?」
悠斗はいつもの表情に戻る。
「好きに理由なんて、
ないんでしょ?」
悠斗はやっぱり
笑っていた。