キャラメルと月のクラゲ
窓の外は、いまだに雨が降っている。
シズクは窓を開けて雨音を聞きながら、懐かしい匂いのするタバコを吸っていた。
ごめんね、なんて言いながら煙の行方を気にしているシズクのくしゃっとした笑顔は間違いなく好きだ。
けれど、その好きはホンモノなんだろうか。
僕はマグカップに入った温かいコーヒーを渡しながら思っていた。
ほんとに空っぽだね。
とシズクは置かれたまま水槽を見て言った。
好きだと思っているシズクと一緒にいるのに、僕の心はこの水槽みたいだった。
大事なモノが、大切なモノがいない。
好きだという嘘が、僕の心を締め付ける。

***

あのあと、私が彼にエプロンを投げ付けたあと、二人がどうなったのかなんて知らない。
知りたくもない。
私はそんなことを合コンの最中に思っていた。
デートなんて嘘だった。
目の前ではしゃぐ年上の会社員達は寒々しい下ネタで盛り上がっている。
私の性癖について聞いてくるデリカシーのないオトナに私は愛想よく振る舞っている。
今日もまた、嘘が降り積もる。
雨なんて、降らなければいいのに。

***

「雨の匂いに僕は思う」
「嘘をついて私は願う」
「このことを話したらキミはどんな顔をするんだろう」
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