あなたのそばにいたいから
「もうすぐ、朝ごはんできるから、顔洗ってきなよ。」

「あぁ、うまそうだな。」

「ありがとう。ほら、さっさと仕度して。」

私はダイニングテーブルに味噌おにぎりと味噌汁、
そしてだし巻きたまごを用意した。

「なんか、こういうのいいな。」

「私はトモの奥さんだもの、
これから毎日こうよ。ところで、お味は?」

「うん、うまい。ありがとな。」

「どういたしまして。」

トモに「奥さん」って言っちゃった。
昨日はそのほかの報告で婚姻届のことまで話せなかった。
トモは久しぶり?の和食を堪能している様子だったので、
もう少し経ってから白状しようと思っていた。

「ユウ、俺、気になることがあるんだけど。」

「何?」

「もしかして、婚姻届出した?昨日もパーティーで
『婚約者』じゃなくて『妻』って言ってたし、
今も『奥さん』って言ってたし。」

「うん。実は…」

「あのさ、普通、そういう大事なことって相談したり、
報告したりするもんだろう。
確かに、ユウが不安だったら出してもらっていいって俺、
言ったけど…」

「ごめんなさい、トモ。
ビザ申請の関係で婚姻届を出しておいたほうがいいことがわかったの。
ただ、私がアメリカで一緒に暮らすことをサプライズにしたかったから、
トモのご両親、うちの親、会社のみんなには相談して協力してもらったの。
トモだけに言っていなくてごめんなさい。」

「確かに自分もビザ申請をしたから、
パスポートの有効期限やその他必要事項はわかる。
9か月で、しかもSG社の仕事を手伝うとなると就労ビザが必要だ。
でも、一言言ってほしかった。サプライズはいいけど、
自分の結婚記念日もわからないってどういう気持ちになると思う?」

怒り調子で彼は私を責めた。

「そうだよね。本当にごめんなさい。」
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