あなたのそばにいたいから
その日はお昼になってから、トモと一緒に買い物に出かけた。
まずは寝具。トモのアパートは、もともと備えつけのダブルベッド。
トモとけんかするつもりはないけれど、
風邪をひいたりして、別々に寝ることもあるかもしれない。
かといって、ずっとそこで暮らすわけではないので、
ベッドを買うほどではない。
相談した結果、タオルケットとブランケットを用意しておくことにした。
食器も最低限のものだけ買った。あとは食材。
今日の夕飯はお義母さんから教えていただいた煮込みハンバーグにしようと思っていた。
何を作るかはトモに内緒。

「なんか、デートって感じだな。」

トモがつぶやいた。

「そうだね。ちょっと新鮮。」

トモがいうように、私たちは恋人としての期間はあまりない。
ずっと同僚で同志だと思っていたから。

「ところで、食材、いろいろ買ったな。今日の夕食、何?」

「ふふふ、内緒。」


アパートに帰ってきて、
トモに寝室の掃除やお風呂の準備をしてもらっている間に、
私は夕食の準備をした。
キッチンからリビングの方にまで
煮込みハンバーグのにおいがたちこめてきた。

「ユウ、ひょっとして煮込みハンバーグ?」

「当たり!」

「それ、俺の大好物。ユウにその話したことあったっけ?」

「ううん。お義母さんにお聞きしたの。
作り方のお義母さんから教えていただいたんだけど、
トモから合格もらえるかちょっと不安。」

そう答えると後ろからトモに抱きしめられた。

「ありがとう。」

そう言われて、なぜか涙が出そうになった。

向かい合って、夕食をとった。
朝も向かい合ってはいたけれど、
事情聴取の続きがあったから、ちょっと緊張もあった。
でも、今は違う。家庭ってこうなのかな、
と思わせてくれた。煮込みハンバーグもトモから合格をもらった。
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