白球に届け
初めて知った。
でも、彼のことが好きになったかといえば別の話だ。
私は3組で彼は2組、中学も違う。
放課後かクラス解体でもなければ知らなかった。

グラウンドには女子たちが群がっている。
私はその中に入らず、教室から眺めているだけ。

「愛ちゃん、ゲーセン行く?」

佳奈の声で現実に帰る。

「いいけど?」

何もすることがないから佳奈の誘いに乗ることにした。

学校から繁華街へ行って、佳奈の行きつけだというゲーセンに入ってみた。

一緒にいるのは佳奈の他に3人。
4人ともゲーセン慣れしているようだった

「愛ちゃん、何がしたい?」

「私は何でも……と、言いたいんだけど、ここのゲーセンってカラオケできるよね」

「できるけど、高いからやめた方がいいよ」

「じゃぁ、何がいいの?」

「クイズゲームとかは?」

「それなら私もできそうかな」

「今、クイズゲームが人気だからね~」

「じゃあしよっか」

誰かの声でみんながうなづく。

クイズゲームは有名なあのビデオゲーム。

私の台で出た問題はなぜか歴史分野で『紀元25年に後漢を建てた皇帝は?』やら『豊臣秀吉が徳川家康と引き分けた戦いは?』といったところ。

「『こうぶてい』ってだれ?」

問題の答えを入力している私に佳奈が横から言う。

「倭の奴国王に金印を授けた皇帝だけど」

「いつの時代?」

「1世紀。今から2,000年ほど前かな?」

「どこの国の王様?」

「後漢の皇帝だから今の中国に相当するかな……」

「愛ちゃんすごいね~」

「ううん、子供向けの漫画で見ただけだから」

小学校だったか中学校だったかに子供向けの歴史漫画があって憧れの先輩が読んでいたから読んでみた。だそれだけの話。

『日本の歴史』、『世界の歴史』、『中国の歴史』と3つの分野に分かれていて、人物事典まであった。

なんとなく読んでみて、興味深かったから覚えていただけなのに……。

「私は歴史にそこまで明るくないかな。大河ドラマより月9だし」

「私は親が時代劇すきだから、毎週日曜日は大河ドラマだったよ」

「うちはそこまでマニアックじゃないよ~」

「うちのお父さんは時代小説が好きだからね。司●遼●郎とか池●正●郎とか読んでたよ」

「すんごいマニアック……。うちは恋愛小説が多いかな。お母さんが恋愛小説が好きでメロドラマまでみていたから」

「私ってそんなにおっさん臭い?」

「う~ん、歴史が好きだったらおっさん臭いかな?」


1時間半後。

「じゃあまたね~」

「明日学校で」
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