白球に届け
ゲームセンターから帰って帰りの電車に乗る。

座れるどころか本を読むスペースもない。

夜の電車ってこんなに混むんだ……。朝もあんまり変わらないけど。

電車を降りるとあたりは既に暗くなっていて、夜空には星が浮かんでいた。

私は一路、家に帰り、夕食を取った。

今日の夕食は豆腐ステーキだった。
水を切って片栗粉と小麦粉をまぶし、フライパンで焼き揚げて、えのき茸やしめじ、まいたけを炒めてしょうゆとみりんで味付けしたソースがとろ~り、プレートの上に乗っている。

添え菜は茹でたほうれん草とにんじん、ハンバーグ風に仕立てたのか、粉ふき芋まであった。

「今日はお父さんが会社の付き合いで遅くなるそうよ。だから早く食べてね」

「は~い」

焼き揚げられた豆腐をはしで切ると人工のクレバスにソースが流れ込んでくる。


食べてみた感じは……、片栗粉の塊がスライムを食べたような食感を出していたけど、しょうゆのうま味とみりんの甘味でかつお節を乗せてポン酢をかけたやっこより、味に深みを感じた。

お父さんから『日本料理は世界最高の料理だ』というけど、豆腐と片栗粉、しょうゆ、みりんでここまでできるだ……。

本当は豆腐じゃなくて牛肉が食べたいけど、こんな調理のしかただったら豆腐料理も飽きなくなる。

食べ終わったらニュースを見てお風呂に入って……。

この夜はゲーム疲れのせいかよく眠れた。

そして翌朝……。

「おはよう。寝不足?」

「ううん、よく眠れたよ」

「それにしては寝不足みたいだけど……」

佳奈に言われるまでもなく、何か違和感を感じる。でも恋の病というものではないことは確か……。な、はず。

「そう?」

「うん」

そんなところで先生が入って来てこう言う。

「お前ら全員席に就け~これから朝のSHR(ショートホームルーム)を始めるぞ~」

うん、いつも通りの朝だ。

1時間目。世界史の授業。
先生が黒板に書きながら講義する。

「紀元前202年、劉邦は垓下の戦いで項羽に勝利し、漢王朝を建てた」

劉邦って誰?あ、劉備のご先祖様か。

「劉邦から数えて7代目になる武帝は16歳で皇帝になり、張騫を西域に派遣した。今まで匈奴に対し屈辱的な外交を行っていた漢王朝が初めて積極的に匈奴と戦うようになった」

16歳って高校生じゃん。そんな年でなれるものなの?

「武帝が行ったことはそれだけでない。衛氏朝鮮を滅ぼして東北区と朝鮮半島に4郡を置き、塩と鉄を専売にした」

衛氏朝鮮?李氏朝鮮じゃなくて!?
専売って、政府だけが作って売れるってことだよね。
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