チャット恋愛注意報!!(新)
「ね、どういう財布がいいと思う?」
「これ」
「えっ……即決?」
「ユージは多分こういうの好きだよ。 ボロボロの財布も、元はこういう感じだったと思うし」
YUKIが差し出してきたのは、二つ折りの黒い財布だ。
……あ、そう言われると、確かにユージは黒い二つ折りの財布を使ってたかも……。
「……YUKIって、よく見てるねぇ……」
「まぁ、人を観察するのが好きだから。 ちなみにフジヤマは、お札はズボンの右後ろのポケット。 小銭入れは前ポケットの左側。 右側は携帯電話で、左後ろはカード類かな」
「うわぁ、ほんとによく見てる……」
そう言われると、フジヤマって免許証をポケットから出してたっけ。
どのポケットからだったかまでは、覚えてないけど……。
「……ねぇ、もしかして私のことも色々見てた?」
「ん? ……さぁ、どうだろうね?」
……出た、肯定とも否定ともわからない笑顔。
ていうかこの場合、十中八九肯定だと思うけど……。
怖いなぁ。
YUKIの前だと、下手な行動は取れないね。
「……人を観察するのが好きとか、怖いお人ですねぇ……」
「自分でも気付いてないことを、俺が知ってそうだから?」
「うん、それをネタにお金とか取られそう」
「あはは、そんなことしないよ」
クスクスと笑ったYUKIは、どこか遠くを見て小さく言った。
「どんなに小さいことも見逃したくないんだ。 サクラのことも、ユージのことも、フジヤマのことも……出来る限りのことをこの目で見て、伝えたいんだよ」