チャット恋愛注意報!!(新)


『……だからアイツは“YUKI”って名前だったのか』



フジヤマがポツリと言う。



『俺とユキを知ってたのなら、最初に言えっつーの』



そう言ったあと、フジヤマは深く深く息を吐き出した。


そして、無言。

長い長い、無言。


……その後、電話の向こうから聞こえてくるのはフジヤマのため息だけだった。


──……と、その時。



「あっ」



静かな部屋に響いたのは、ユージの驚いたような声。



「サクラ、これ見て」

「え? ……あっ」



ユージに促され、パソコンの画面を見る。


そこに映し出されていたのは、『高校生ルーム8』。

……さっきまではフジヤマのメアドが表示されていたけれど、今は“消えている”。



『ん? なに、どうした?』

「フジヤマ…は、今チャットしてないよね……?」

『おう、愛しのサクラと電話中だからな』


「……じゃあ、今すぐ『高校生ルーム8』を見て」

『おいコラ、“愛しの”はスルーかよ。 ……ったく、えーっと、『高校生ルーム8』ね。 5秒で開くから待って』



フジヤマの声を聞きながら、画面を凝視する。


ドキン、ドキン、ドキン。

鼓動がどんどん速くなっているのが、自分でもわかった。

興奮…それとも、緊張……?

理由は、よくわからない。


でも、パソコンの画面に表示されている文字を見つめる私の呼吸は、確実に荒くなっていた。


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