偽りのヒーロー
「余計なことはしないでよね」
帰り道、釘をさすように言われた。
「未蔓連れてどっか行く?」なんて、恋のキューピッドみたいな真似事を提案したら、やめてと口酸っぱく言われてしまった。
もちろん、菖蒲のしたいようにしたらいい。
その言葉を受け入れたけど、好きな人がいて、そこショートカットできる方法があるのに、それを利用しないなんて、菖蒲も大概人が良い。
それを言ったら、茶化さないでと怒られてしまったけれど。
一人になった、暗い夜道で頭を悩ませる。
あんなにも未蔓のことを近くで聞いて、何もないとも直接口にしたことだってある。それなのに、誤解されてしまうようじゃ、根回しが浅いのかもしれない。
他の人にだったら、誤解されてもいいけれど、菖蒲を安心させる方法ってないのだろうか。
そんなことをぐるぐると考えを巡らせる。
「菜子……今までどこに行ってたんだ! ちょっとそこに座りなさい!! 連絡もよこさないで……」
意気揚々と家のドアを開けると、玄関で待ち構えていた父に掴まってしまった。
ガミガミと説教をされて、最初は声を潜めていたくせに、次第に大きくなった怒号は、就寝していた弟を起こしてしまったらしい。
苦笑して、父の怒号を受け入れた。