偽りのヒーロー
そのまたある日は、買い物につき合ってもらった。
目当ての品は見つからなくて、帰りに可愛らしい雑貨屋さんに入った。
ピアスなどのアクセサリーや、かわいいらしいシュシュなんかが所せましと並んでいる。目移りするような、可愛い商品ばかり。
中学の部活の引退と同時に伸ばし始めた髪は、今では肩につくくらいには長くなっていて、シュシュをひとつ、手に取った。
「買うのか?」
女の子の多い店でも怯まない彼は、やはり場慣れしていると感じた。
当たり前のように、「こっちもよくね?」と髪の毛に当ててくるのが、なんだか本当につき合っているようにも錯覚させた。
「じゃあ、それ買おうかな」
紫璃の手にしていたシュシュに触れようとすると、菜子の手が空を切る。
「買ってやる」
「え、でも……」
「いいって」
ずんずんレジに向かう紫璃の背中を追った。菜子が隣にいるのにも関わらず、きちんとプレゼント用の可愛い包みにくるまれたシュシュ。
お店を出てからすぐに渡されると、菜子は「ありがとう」と微笑んだ。
何でもない日にもらったプレゼント。
気恥ずかしくて、家に帰って何度も見た。さっそく次の日に、そのシュシュで髪を結って学校へ行くと、紫璃の視線を何度も何度も感じた。