偽りのヒーロー




そのまたある日は、買い物につき合ってもらった。


目当ての品は見つからなくて、帰りに可愛らしい雑貨屋さんに入った。

ピアスなどのアクセサリーや、かわいいらしいシュシュなんかが所せましと並んでいる。目移りするような、可愛い商品ばかり。


中学の部活の引退と同時に伸ばし始めた髪は、今では肩につくくらいには長くなっていて、シュシュをひとつ、手に取った。



「買うのか?」



 女の子の多い店でも怯まない彼は、やはり場慣れしていると感じた。

当たり前のように、「こっちもよくね?」と髪の毛に当ててくるのが、なんだか本当につき合っているようにも錯覚させた。



「じゃあ、それ買おうかな」



 紫璃の手にしていたシュシュに触れようとすると、菜子の手が空を切る。



「買ってやる」

「え、でも……」

「いいって」



 ずんずんレジに向かう紫璃の背中を追った。菜子が隣にいるのにも関わらず、きちんとプレゼント用の可愛い包みにくるまれたシュシュ。

お店を出てからすぐに渡されると、菜子は「ありがとう」と微笑んだ。





 何でもない日にもらったプレゼント。

気恥ずかしくて、家に帰って何度も見た。さっそく次の日に、そのシュシュで髪を結って学校へ行くと、紫璃の視線を何度も何度も感じた。




< 129 / 425 >

この作品をシェア

pagetop