偽りのヒーロー
アニメ映画も馬鹿にはできない。興味のなさそうな紫璃に、まあまあ面白かったと会話を弾ませ、なんだか嬉しくなった頃。



「時間、大丈夫か?」



 高校生にしても早い帰宅を促す時間。いつもは帰っているはずの菜子に、紫璃が気づかい声をかけてくれた。

気にしてくれていた。そう思うだけで、寒空の中、身体が温まるかのように錯覚させる。



「大丈夫!」



 菜子が二ッと笑みを浮かべて、勢いよく返事をした。

「ちょっと行きたいとこあるんだけど」と、紫璃に連れられるがまま、電車に乗った。少しばかり長い移動時間に、胸を高鳴らせていると、着いた場所は、海にほど近い場所だった。




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