偽りのヒーロー
「てかさあ」
打って変わって話を変えた。そのコロっとした変わりようは、まるで女子と話しているようだ。
「前から思ってたんだけど、菜子ってなんで全チャック閉め?」
レオはジャージのファスナーの金具を手に持ち、ジッジッと勢いよく上下に開け閉めをして見せた。
「なんでって、なんとなくだけど……。癖?」
「ふーん。なんか色気ないよなあ。お前あんな下着穿いてるくせにな」
レオが話し終える前に、菜子がそれを頭を叩いた。さらにからかってやろうと、顔を覗くべく菜子の顔に近づけると、飄々とした眼差しと目があった。
「……下着評論家か何かなの? それなら許す。でも変態はだめだよ」
ニッと笑いながら、卓球台へ向かう菜子に「許すのかよ!」と大きな声で突っ込んだ。
けたけたと笑って、転がってきたピンポン玉をレオの頭めがけて放り投げると、見事に軽快な音と共に頭頂部へクリーンヒットしていた。
ラケットを構えてレオに向けると、菜子は口を開く。
「変態だったら絶交だからねー」
入れ替わるように、隣に未蔓が腰を下ろした。つむじをぐりぐりと強く刺激されたレオは、頭を押さえて悶絶する。
「だってさあ」と口を尖らせるレオに、静かに口を開いた。