偽りのヒーロー



 親が友人同士だという、よくある幼馴染の話。

例にもれず、未蔓と菜子の家族は仲が良い。事あるごとに顔を合わせ、気づけば用事も何もないときも一緒にいる。




 昔は気味が悪いやつだと笑われていた。いつも仏頂面で、あまり笑わない子供だと。

今ほど口を開かなかったのは、単純に上手く話せなかったからだ。

短い言葉は途切れ途切れに友人の話の腰を折り、「お前といると話が進まない」と、「変な奴」、と言われたのは、保育園に通っていた頃だったろうか。




 幼い頃、友達と外で遊んでいた。初めはたくさんいたはずの友達も、いつしか一人、また一人と数を減らして。



 戦隊ごっこ、ライダーごっこ。同じ歳の、男の子と同じ遊びをしても、なぜかいつも怪人役。

本当は、正義のヒーロー役をやりたいのに。なぜだろう、そんなことを子供ながらに疑問に思ったものだが、敵がいないと成立しない遊びは、釈然とせずも続けていた。



 ふとおかしいと思ったのは、みんなでかくれんぼをしていたときのことだ。



「もう、かえるかねがなったのに、だれもこない」



 夕方に鳴る、童謡の曲。幼い子供の帰宅を促す合図の音。

わんわんと広い空に木霊する音を聞き終わった後、待っても待っても鬼役の子が探しにこない。難しいところに隠れてしまったのだろうか、茂みから出ると既に一緒に遊んでいたはずの友達が姿を消していた。



 たか鬼、いろ鬼、かげ踏み鬼。どれをやっても鬼役がまわってきた。足が遅いから走り回るのは嫌なのに。


それでもみんなと遊べるのが嬉しくて、ずっとずっとそんなことを続けていたら、対人関係が苦手なものになってしまっていた。



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