偽りのヒーロー







「なことみつるはともだちでしょ」

「うん」

「じゃあ、なこのともだちはみつるのともだちでしょ」

「……うん?」

「なこいっぱいともだちつくるよ! そしたらみつるもともだちいっぱいできる!」



 名案だといわんばかりの、胸をそらしたえっへんとえばった態度。鼻の下を指で擦って得意げに。

どこぞのガキ大将かと思えるそれは、そのときの未蔓の胸に痛く響いていた。




 それから菜子は、ままごとだけじゃなくて、レンジャーごっこもするようになった。鬼ごっこだって一緒にした。

次第に遠ざかっていた友達との大勢での遊びも、再び未蔓はするようになった。



 相手に寄り添う術を持っているのはいいことだ。自分にはない、きっと誰もができるものではないことだ。

でも、寄り添いすぎて自分を押し殺すのとは違う。




それに気づいた頃には、既に菜子のお母さんは細くなった身体を隠すために、夏でもいつも厚着をしていた。



< 158 / 425 >

この作品をシェア

pagetop