偽りのヒーロー
「なことみつるはともだちでしょ」
「うん」
「じゃあ、なこのともだちはみつるのともだちでしょ」
「……うん?」
「なこいっぱいともだちつくるよ! そしたらみつるもともだちいっぱいできる!」
名案だといわんばかりの、胸をそらしたえっへんとえばった態度。鼻の下を指で擦って得意げに。
どこぞのガキ大将かと思えるそれは、そのときの未蔓の胸に痛く響いていた。
それから菜子は、ままごとだけじゃなくて、レンジャーごっこもするようになった。鬼ごっこだって一緒にした。
次第に遠ざかっていた友達との大勢での遊びも、再び未蔓はするようになった。
相手に寄り添う術を持っているのはいいことだ。自分にはない、きっと誰もができるものではないことだ。
でも、寄り添いすぎて自分を押し殺すのとは違う。
それに気づいた頃には、既に菜子のお母さんは細くなった身体を隠すために、夏でもいつも厚着をしていた。