偽りのヒーロー
「蓮見さんには、はい。これあげる」
どこからともなく現れた未蔓が、菖蒲の手のひらに丸い缶バッチを落とした。ピンク色のリボンが描かれている缶バッチ。
慌てて両手をくっつけた菖蒲が、手の中のものを、まじまじと見つめていた。
「それ、ナイトピンクね」
未蔓の言葉に「ナイトピンク?」と目をぱちくりとさせて、未蔓と手の中それを交互に見ていた。
その横から、「ピンクが変身したときにスーツについてるリボンだよ!」と菜子が告げると、そう、と大事そうに手の中を見ていた。
「いいの?」と遠慮がちに未蔓を見る菖蒲の顔は赤らんでいる。一方、レオは頬をふくらませて。
こりゃあ逃げるが勝ちだと言わんばかりに、菜子はその場を去ろうとした。すると、制服の裾をがっしりと掴まれ前に進めず後ずさりをした。
恨めしそうなレオの視線が、菜子に突き刺さっている。八つ当たりと言わんばかりの眼差しは、未蔓にいいところを持っていかれてしまって後悔しているようだった。一日中めそめそと後悔の念を囁かれては、さすがにうんざりする。
何度目かのレオの泣き言に、苦笑して慰めるしかなかった。