偽りのヒーロー
「ね、今日ミッツひま?」
「今日は帰らないと」
「まじかー。劇場版のジュウレンジャー、レンタル始まったから一緒に見ようと思ったんだけど」
未蔓の肩をがっしりと組むレオ。
カバンの中から、レンタルDVDの袋を取り出すと、ひらひらと未蔓の目の前に見せびらかすようにちらつかせる。
「見る」
「え、でも用事……」
「うち来て」
放課後、レオと未蔓が並んで帰路についていた。未蔓の家で二人の共通する大好きな戦隊ものの映画のDVDを見るためだ。
途中、コンビニによると、スナック菓子とジュースを買って、既に映画を楽しむ準備は万端だ。
「お邪魔しまーす」
レオは初めて敷居をまたぐ未蔓の家に、物珍しそうに顔を忙しなく動かす。
未蔓の部屋に入ると、きょろきょろと部屋の中を一通り見回し、レオはベッドの下をがさごそと探っていた。男の嗜みを探るべく、手を伸ばしたけれど、「レオの探してるものはないと思う」と、あっけなく制されて、思わず背筋が伸びた。
DVDをプレーヤーに入れると、円盤の吸い込まれていく音に心躍る。
映画のタイトルロゴがでかでかと映し出されると、白煙の煙からヒーローが姿を現した。
小さな子供のように目を輝かせている二人は、エンドロールが流れる頃には、手に汗を握り、心地良い疲労感に襲われた。
レオは満足感でうっぱいになると、脱力してベットに背を預けた。
ピンポーン
「客?」
「ん。ちょっと待ってて」
レオを一人、未蔓の部屋に置いて、未蔓はドアをゆっくりと開けた。
のそのそと未蔓が廊下を歩く音が、客人が来たというのに微塵も急ぐ素振りがない。
ガチャガチャと鍵を開く音と共に「わ!」と幼い声が聞こえてきた。