偽りのヒーロー
action.15
「おはよう」
「……おー、おはよ」
いつものようにレオに朝の挨拶をするも、なぜか曖昧な反応をしていた。未蔓が昨日忘れていったレオのカバンを置くと、いつも通りのレオだった。
「レオ、昨日ありがとね。楓、すごい喜んでた」
「うん。いや、うん」
またもレオの歯切れの悪い言葉に、菜子はひっかかりを感じずにはいられなかった。
不自然に思っていたのは、やはり菜子の勘違いなどではなかった。今日はやけに隣から視線を感じるのだ。レオがチラチラと見ては、菜子が目を合わせようとすると、すぐ目を逸らす。
最初こそ気にしていなかったものの、釈然としないその態度は、どうしたって気にかかる。
「何? 私の顔、なんかついてる?」
「……うん。目と鼻と口が」
「……。お前もついてるわ!」
凝視してくるレオに、居ても立っても居られなくなって、ついには本人に問うてみた。
しかしレオはふざけた答えしか返さないものだから、その尖らせた唇を力強く摘まんでやった。