偽りのヒーロー
どれくらい経っただろうか。
ただレオの隣に座って、ぶらぶらとつま先をくっつけたり離したり。自身の足をゆらゆらさせて、二人の間には静かな空気が流れていた。
「……菜子はさ、小学校ってここらへんじゃないよな?」
突然、レオが静寂を切り裂いた。いつもの明るさからは予想しえないような小さな声で。上を向いて、額と目元に氷のうをあてながら、ぽつりと呟いていた。
「ここらへんって東小とかでしょ? 私、二小だけど」
菜子の答えは、以前、未蔓に聞いた答えと一緒だった。
わかっていたはずのことを、菜子の口から直接聞いたところで、何も答えは変わらない。
レオは落胆する自分自身に困惑していた。
1%でも、万が一のことがあるかもと、ほんの少しの期待を寄せていた質問は、思っていたよりずっと心に重くのしかかる。
——何を期待していたのだろうか。もしそれが、レオの望んでいた答えだったとして、それが一体どうなるのだろう。
「引っ越した、とかは?」
「今のとこにずっと住んでるけど……。なに? どうしたの?」
立て続けにしたレオの質問は、菜子を怪訝な顔にさせた。その顔を見て、いや、と続けるつもりの疑問を飲み込み、言葉を濁した。
期待している自分がばかばかしい。俯いて、静かに呼吸を整えた。
「あ、でも」
何かを思い出したように、菜子が口を開いていた。