偽りのヒーロー
「どの面下げってって感じだろうけど。今日、原田……くんのこと見て、なんか、謝らないとって思った。本当にごめんなさい」
ひたすら頭を下げる小さな頭につむじが見えている。街灯に照らされて、茶色い髪の毛が少し赤みがかっているようだ。
誠意を込めて謝るその姿を見て、やはり自分が好きになったのは間違いではない、と確信した。
初めはその凛々しい容姿が気になったのは確かだが、ちょっと気になって菖蒲を見てみれば、こんなにも可愛らしい。
一目ぼれ当然の、姿形から入った好意は、今ではすっかりその素直になりきれない優しさが輝いて見える。
一見きつく感じられる口調も、甘い声で言われたら何の苛々も感じられないし、思ったより小さなその身長は、きっと抱きしめたらちょうどよく胸元におさまるだろう。
今日は本当に偶然の誘いだったが、街に出ていてよかった、と心から誘ってくれたレオに感謝した。弟を連れていた菜子にさえ、だ。
おかげで小さな子に優しいところも拝めて、なんとも貴重な一日になったのだ。
何か、うまく誘い文句の一言でも言えたらいいのに、上手く言葉にできない自分がもどかしい。