偽りのヒーロー
action.17
がやがやと教室内が騒々しいのは、中間テストが返却されているからだった。
滞りなく、至って平常通りの成績を修めた菜子は、ふうとため息ついて安堵していた。このテストが終われば、修学旅行という一大イベントを迎えるのだ。
成績不振で落ち込んだまま、旅行に行くなんてたまったものではない。
返却された数枚のテストを見て、菜子は頭の中でおおよその平均点を割り出していた。
2学期になってから、学年全体が進路を見据える空気になっている。進路希望の用紙が配られるのも、それの一端を担っていて。できれば受験での失敗は避けたいな、なんて曖昧に将来を描いていた。
「はいじゃあ、先生から連絡ー。
テスト前にも話したが、修学旅行が終わったら二者面談があるからな。この前進路希望出してもらったと思うけど、まだ出してないやついるから、修学旅行前には出すように!
今回のテスト結果踏まえて面談すっからなー。修学旅行だからって浮かれてんなよー」
先生が教壇に手をつきながら、進路指導の用紙をひらひらとさせていた。
テストから解放され、束の間の修学旅行前の浮かれ気分に水を差されて、生徒からはブーイングが飛んでいた。
隣をちらりと覗き見ると、絶句して頭を抱えているのが見えて、無惨な結果ということだけは言わずもがなだった。