偽りのヒーロー




「よし。帰るか」



 カバンの中に綺麗に配置された、勉強道具やお弁当箱。

うまく詰められた綺麗な中身を見て、満足気に頷いていると、教室内に焦りの声が聞こえてきた。



「うわー、どうしよ。なんでこんな日に限って掃除当番なの」

「なに? なんか用事?」



 わたわたとほこりの散る箒を掃くクラスメイトに声をかけた。

話を聞くところによると、いつもはなかなか会うことのままならない、別の学校に通う彼氏突然会える時間ができたという。

嬉しい悲鳴とはまさにこのことなのだろう。照れたように、目尻を下げるクラスメイトが輝いて見える。



「代わろっか。私ひまだから」

「本当!? 助かる! 菜子、ありがとー!」



 嬉しそうに頬を緩ませるとクラスメイトから、箒を受け取った。
パタパタと駆け足で駆けていく友人を窓から覗くと、校門の前に立つ見慣れない生徒と手を繋いで歩いていた。

途中、降り返って大きく手を振る友人が微笑ましくて、その日は自分の帰る足もなんだか軽く感じていた。




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