偽りのヒーロー
「すげー! 金ピカ!」
「うん。すごい」
数時間の移動のあと、金色に輝くお寺を見て、歓声があがっていた。「写真撮ろー」とクラスメイトの声につられて、菜子たちも写真を撮った。
お寺なんかつまらないと言っていたレオも、移動するたび意気揚々と話しているようで、ずいぶんと満喫しているように見える。
初日早々京都限定のヒーローストラップを見つけたと、未蔓が鼻息を荒くして、菖蒲は初めてその光景を見たのか、目を丸くしていたけれど、次の瞬間には眩しそうに目を細めていた。
「寺の次は神社って、渋いよなあ」
ぽつりと呟くレオに、「あたり前でしょ」と付け加えた。意気揚々としていた神社を歩く軽い足取りも、ずいぶんと気だるげになっている。
「さっきのとこは学問の神様だけど、こっちは恋愛の神様だよ。全然違うよ」
ふーん、とつまらなさそうに、あたりを見回していた。
先ほど見て回った学業成就を謳う神社と打って変わって、今しがた足を運んだ神社は、恋愛にご利益のあると評判の神社だった。
見慣れた制服を着た生徒もいれば、見たことのない制服に身をつつんだ人、観光客と思われる数多くの人で賑わっていた。
恋愛にご利益があるというだけあって、周囲の女子たちの表情が明るい。
「あれ何やってんの?」
レオが指さしたのは、数メートルの距離を開けて向かい合う、2つの大きな石。多くの女子で賑わっており、群がるさまがまるで何かを信仰しているかのようにも思える。
目を瞑って、一つの石のある場所からもう一方の石のほうへ歩いて行き、無事に両石に手をつくことができれば、想いが実るという恋愛成就の石だ。
不思議そうに見つめるレオに、興味があるのかと思い試してみるかと誘ってみれば、首を横に振っている。
「あ、だよね。菖蒲の前ではさすがに無理か。ごめんね」
拝殿に向かい、手を合わせる菖蒲の後姿を見ながら、意地悪な笑みを向けた。
ニヤニヤした菜子の顔を、レオは眉間に皺をよせて見つめている。おもむろに頬を引っ張られると、やめてとレオの手を振り払った。