偽りのヒーロー



「あ、そうだ。あのさ、レオのパンツ教えて」



 真顔の菜子に、レオはベルトに手を添えた。いきなり事が大きく運んだのかと頭の中がパニックに陥ったのだが、どうやらそうではないらしい。



「えっ、何してるの? やめてよ、捕まるって」

「だって菜子が見せろって言ったんじゃん!」

「見せろなんて言ってないよ! ……なんでそんな下ネタに持ってくかな。違うくて。楓の下着買いに行ったけど、レオみたいなのがないってごねるから。メーカーとか教えてよ。調べるから」



 呆れたように笑う菜子と、変態と添えられた未蔓の言葉にレオは胸が痛くなった。菜子の手に持っていた携帯が、ネットの検索画面になっていることなど、全く気づかなかったのだから。

しょぼんとしたレオが口ずさむ下着メーカーのブランドをぽちぽちと入力していた。



「菜子だって下ネタ言うじゃん。男の前なのに」

「や、私のは真面目な相談だから」



 小気味いい会話に、レオは笑みを浮かべた。

今さら自分が格好つける必要などないかもしれない、そんな決意を思わせるように、大きな両手を顔の前で合わせた。





 少しの時間抜けていた菖蒲が戻ってくると、ようやく班行動らしい班別行動をした。

4人で歩いてまわって、長い待ち時間を経て、2つほど乗り物に乗ったあと、外の景色は曇天に覆われていた。




 小雨が降りだすと、まだ暗くなるには早い時間だというのに、空が厚い雲に覆われていた。


最終日の、あとは帰るだけというこの状況に水を差すようだ。多くの生徒が集合場所に集まると、ぞろぞろとテーマパークのゲートからすり抜けていく。



朝に積んだ大きな荷物のあるバスに乗って、あとは駅に向かうだけ。大きな駅まで運んでもらって、あとは新幹線で帰るだけだったはずなのだ。



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