偽りのヒーロー
action.19
修学旅行という一大イベントを終えると、皆気が抜けたような毎日を過ごしていた。
だらだらと集中力な散漫な日常に、二者面談という急な進路という言葉が突きつけられる。
「葉山、おい、葉山ー」
肩に名簿らしきものをぺしぺしとぶつけながら菜子を呼ぶのは、担任の加藤大和(かとう やまと)だった。
「はい?」
「あのさー、立花見なかったか? 今日の面談アイツが最後なんだけど、全然来なくってさ」
「そうなんですか? すみません、見てないです」
首をコキコキと左右に動かしながら、うーんと頭を捻っている。
まさか面談があるのに帰っているのではないかと思ったが、帰り際の机に置かれたカバンを見て、菜子は首を傾げた。
「そうかー。悪いな、引き止めて」
「いや、いいですけど」
「もし立花見たら言っといて。俺すっげえ怒ってるって」
「ふふ、わかりました」
もう帰るだけだ。
菜子が下駄箱に向かうまできっとレオに会うことはないだろうか、万が一にでも会うことがあれば、2倍くらいに着色して驚かせてやろう。
そう思いながら、階段を下っていた。