偽りのヒーロー
聞き耳をたてるのは、もう止めだ。聞いているのも、二人を見ているのも辛くなる。
トボトボと階段を昇って行くと、加藤が仁王立ちで立っている。レオを見て、唇をひくつかせて、ノートのようなものを手でばしばしと叩いている。
「たーちーばーなー。お前今日面談だっつったろ! どこほっつき歩いてたんだよ、ばかやろう!」
自分よりも大きなレオの耳をぎゅうぎゅうと引っ張っている。ちぎれんばかりに力を込められて、教室に連行される頃には、耳が真っ赤になってしまっていた。
向かい合った二つの机。ガタガタを椅子を揺らして腰を下ろすと、早速ガミガミと説教が始まった。
「そんなに怒んないでよ、大和くん。俺今落ち込んでるんだから」
「落ち込んでるのは俺もだよ! これ見てみろ!」
ばしっと机の上に叩きつけられた二枚の用紙。修学旅行前に提出した、進路調査票と、中間考査の成績表だった。
そこには、お世辞にも綺麗とは言えないレオの字で、「第一希望 就職」「第二希望 特になし」と書かれている。
おまけによく確認もしていなかった中間考査の成績表には、あられもない総合順位が記載されていた。
「2年が何人いるかわかるか? 276人だ。お前の総合順位何位よ? 259位だぞ! これで就職できると思うのか? まず卒業できるかどうかって話だよ!」
次々と突きつけられる事実を発せられても、レオはいまいち身が入らない様子だ。
大和くん、と愛称のつくだけあってそこそこ若いほうの担任の教師、加藤大和。
コンコンと指で机をノックして、真面目に聞けと合図をしているようだった。
「なんか俺、今、あんま考えられないんだもん……」
「今考えなかったらいつ考えんだよ。留年でもする気か?」
それもいいかもね、と心無いレオの一言に、加藤はレオの鼻をぐにぐにと摘まんだ。
だってこの前菜子への感情を自覚したんだ。今しがた菜子のことを話す二人を見てちょっと自己嫌悪なんだ。
そんなことは言わなかったが、はあ、とため息が漏れる。
「じゃあお前が今考えてることって何。言えるものなら言ってみ」