偽りのヒーロー
3※
「そいつがヒーローじゃなかったから、幻滅してんのか」
背もたれから身体を外した加藤が、レオを見て真っ直ぐと言葉にした。
幻滅、とういう言葉を聞いて、レオはふるふると首をふる。幻滅したことなんてたったの一度もない。それは、言わなかったけれど。
「俺はさあ、立花みたいに戦隊ものとかそんな見ないけど。小さい頃から思ってたわけよ。ヒーローのことは誰が助けんのって。市民が怪人に襲われてんのに助けに来るのはヒーローだろ。じゃあヒーローが窮地に立たされたときはどうすんの?」
「……他のヒーローが助けにくるんじゃないの」
「じゃあお前がそいつのヒーローになればいいだろ」
加藤の言葉にレオは目をぱちくりとさせた。
伏せていた顔をあげて、加藤の歳のわりには童顔なその顔を、まじまじと見つめる。
ヒーロー。俺が大好きな言葉だ。アニメだって歌だって、一番に思い描くのはそれなのだ。
「……なれないよ」
「なんでだよ?」
「だって、ヒーローは選ばれし者だもん」
子どもさながらのその言い訳に、加藤は手に持ったボールペンをゆらゆらと揺らしている。
戦隊ものを、腐るほどに目にしているのだ。
レオの言い分は、現実世界がどうこう言われようとも、ヒーローの世界ではそうなのだ。
「選ばれしものって何よ? 正義を志す心か? 才能か? 運動できるとか頭がいいとかそういうのか」
「……うん」
「テレビは尺に収めないとなんないからな。例えばよ。その才能はなんで選ばれたんだよ」
「……人より、できるからじゃない」
「人よりできるっていうのは、人並みを知ってるからだろ、ってことは、そいつらは努力してるだろ。例え才能を持っていたとしても、人より秀でるくらいに行動してるわけ」
理屈は通っている気がするが、全部の話は理解ができない。
レオはテレビに出ているもの以上の情報は持ち合わせていないし、そんなの余計な情報だと言わんばかりに口を尖らせる。