偽りのヒーロー
聞けば、中間考査の結果はわりに良好だったのだという。
レオにとっては関係ない、毎度テストが終わるたびに張り出される50番までの成績の掲示。
昔は100番までの成績が掲示されていたらしいのだが、現在の個人情報とか何やらで、50番にまで縮小されたのだという話は聞いたことがある。
菖蒲が31位、未蔓が16位、菜子に至っては4位だったのだというのだから驚きだ。
ぽかんと口を開けていると、その開いた口にお菓子を突っ込み、けたけたと笑っている。
「だから私そこそこ勉強してるんだってば」
疑うようなレオの目つきに、菜子は笑ってこう言った。後ろから数えて4位になったことはあるものの、現実的ではないその結果をどうにも受け入れられそうにない。
「バカな男って嫌かな」
誰が、とは言わなかったが、ちらりと菜子に視線を向けた。生憎その視線は窓の外に向けられていて、交わることはない。
「悪いよりかは頭いいほうがいいんじゃない?」
やはり先生の言ったことと同じことを言う。
菜子も菖蒲も未蔓だって。自分だけが置いていかれているようで、何も言い返すことができなかった。
「やりたいことないの」そういう菜子の言葉は、いつしかの加藤の言葉と全く同じだ。
やりたいことなんてない。
今お前にどうやって告白するかだよバカヤロウ、なんて言えるわけもなく。がっくり肩を落とした。まだ告白どころか、この感情の名前を見つけたばかりなのだ。
そればっかりが頭の中を右往左往している。それでも何かやらなきゃならない……とりあえずは。
「勉強教えて!」