偽りのヒーロー
「どこまで着いてくるんすか……」
ファミレスから出た後も、りん香は紫璃のあとをついてきた。
冬なのに、短いスカート。タイツを履いてるものの、いかにも夏場は露出を好みそうなその風貌。高めのピンヒールのパンプスを履いても、自分を見上げるほどの身長。
……やはり可愛らしい女性だと思う、悔しまきながら。
「これは? 可愛くない?」
あれよこれよとついてまわるりん香が指さしたのは、ブランド品の、高校生が使うにしてはちょっと高価な化粧品。
色も綺麗なトーンの違うピンクのチーク。パッケージも雑貨にしてもおかしくないくらいの繊細な装飾。
……ちょっといいかもしれない。
けれど、りん香が進言したものだと思うと、購入に踏み切るのが難しい。
その後、いくつかの女性モノが売っている売り場を見て回ったが、初めに見た化粧品のようにピンとくるものがなかった。迷った末にそれを買い、綺麗な包みに時間を割く。
りん香が何やらにんまりと笑っていて、顔を背けるので、忙しい。
「お待たせいたしましたー」
ネイルの綺麗な売り場のお姉さんから、小さな紙袋を受け取ると、足早に売り場を後にした。女だらけで居場所がない。
わすかながらに同じフロアに一人でいた男性たちも、きっと女性へのプレゼントも買い求めにきたのかもしれない。
それを尻目に横切ると、カツカツと遅ればせながらりん香の足音が聞こえてきていた。
「……足痛いんなら言ってくださいよ。俺、絆創膏とか持ってないんですけど」
「大丈夫ですか?」と道脇に百合香をエスコートした。
目を丸くしたりん香が、ちょこちょこととガードレールに腰かける。紫璃がしゃがむと、パンプスを履いた踵から、じんわりと血が滲み出ていた。
「俺、コンビニ行って来ますから、動かないでくださいよ」