偽りのヒーロー
「えっと、レ、レオ。あの、」
「なんか菜子見てたら我慢できなくなった! お前可愛いんだもん。言うつもりなかったけど、無理だった!」
けろりといい笑顔を向けるレオに、菜子はなんと言っていいのかわからなくなっていた。あっけらかんと、おはようの挨拶みたいに言う言葉の重みを感じ取れなくて。
がさごそとリュックの中に手を入れると、レオは紙袋を菜子に差し出しのは、レオからの贈り物。
受け取れない、と首を振る菜子に、にかっと笑みを向けるレオは、
「あんま重く考えなくていいから! 残るもんじゃねえし。楓とか、お父さんとかと使ってよ」
そう言って、渡されたのは、女子が好きこのみそうな、少し値の張る入浴剤だった。おずおずと手を伸ばそうともしない菜子に、ぎゅうぎゅうと押しつけて。
レオからもらった紙袋を抱きしめていると、レオは戸惑う菜子を自分の胸の中で収めた。
「やべー。反則だな! あとで紫璃に謝っとく」
ぐりぐりと菜子の頭に、レオが頬ずりをしているのがわかる。
背の高いレオの、ちょうどよく触れるところにある自分の身長を、こうも複雑な感情を抱くとは思ってもみなかった。
「じゃあな」とレオが教室を後にすると、一人になった教室で、菜子はぽかんと拍子抜けしてしまっていた。