偽りのヒーロー
action.23
新しい歳を迎えると、新年あけましておめでとうの連絡のラッシュだった。
いくつもの溜まる連絡に、初めは生真面目に返信していたものの、徐々に短文になっていたのは許してほしい。
「菜子ちゃん、あけましてあめでとう」
「あけましておめでとうございます。 店長、これよかったら」
お節とおもちを食べて、十分に満足感を得たあとは、祖父母が張り切って作ってくれたおもちの消費がものを言う。
その好意がわかるだけに、手製のお餅は大好きなのだけれど、3日目には既に飽きてしまうというのが現状だ。
ジャンクなものが食べたいと主張する楓に同意しても、どうにも冷凍庫がパンパンのまま他の食べ物に手を出すのも気が引ける。
高校に入ってから始めた花屋のバイトは、いつの間にか二年を迎えてしまっていた。
その中で、二度目の新年の挨拶を迎えて知ったのは、花屋を営むこのご夫婦はお餅を好んで食べてくれるという事実。
あまりものといえど、一からつくったお餅を美味しいと言ってくれる好意に甘え、新年はお餅をおすそ分けして消費に貢献してもらっている。
「ありがとう。やっぱり手作りの餅は違うよね。菜子ちゃんちのお餅おいしいもんね」
「すみません、毎度のことあまりもの押しつけちゃって……」
「押しつけるってほどの量じゃないわよ! 大丈夫大丈夫!」
去年の今頃はまだ寝てばかりいた花屋のご夫婦、通称花屋ジュニアも、いつの間にか目を放した隙に走り回るし、断片的な言葉をペラペラと喋るようになった。
ふくふくしていて、幼児特有の、手首に輪ゴムを巻いたようなお肉の皺が可愛らしい。
いつの間にか大きくなった楓にはもうない大福みたいな肌がなんとも愛らしくて、なかなかに溺愛してしまっている。