偽りのヒーロー



「レオは買い物? 一人、じゃないよね?」



 大量の買い物袋をぶら下げて、ガサゴソと手にしたそれらを見て、菜子が口を開いた。

ユニセックスを謳うものもあれば、女性もののブランドロゴが目を惹いて、思わずレオの周辺をきょろきょろと確認してしまった。

揺さぶりをかけてしまったように聞こえただろうか。

菜子は言葉を発してからわずかに後悔していた。レオが誰来ようと自由なものだが、探ったようにも聞こえてしまったかもしれない、とぐるぐる頭の中で思考回路が回っていた。



「えっ! ……や、やきもち?」



 やはりそう聞こえてしまったのか、と菜子は苦笑いをした。目を見開いて驚いたような顔ののち、嬉しそうに口元が歪んでいる。

「違うわ」と一言、くくっと笑いながら返すと、レオはシュンと肩を落としていた。



「それ。女ものじゃん。誰と来たのかなって、単純に思っただけだよ」

「なんだよー…。や、姉ちゃんとね、来たんだけど。荷物持ちに連れ出された」

「へえ、お姉さんと。で、お姉さんは? レオ一人じゃん」

「さっき知り合いと会ったみたいで、あそこで話してる。ちょっと待っててって言われて、もう30分経った」



 レオが疲弊したようにげっそりとした顔をして、ほど近くにある店の前で二人の女性が並んでいた。

小さい、とは言っても平均身長くらいの女性と、すっと背の高い女の人。

遠目から見ても話しが弾んでいるのがわかって、なるほど尻に敷かれているのか、と姉弟仲の良さが窺えた。



「あれ、レオのお姉さん? モデルみたいだね」



 背の高い人を指して菜子が言うと、やっぱりなとでも言うように、レオは肩を揺らして笑っていた。



「俺の姉ちゃん、ちっこいほうだよ」



 予想外の返答に、菜子は二度見さながら確認した。

恐らくどちらも綺麗な今時の顔、といったようにも思えるが、菜子の位置するところからだとあまり判断がつかない。


恐らくレオの姉弟ならば、身長も高いだろうという考えだったのだが、どうにも大違いだったようだ。


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