偽りのヒーロー
「あれっ! この子……あれえ〜レオ〜?」
「なんだよ、そうだけど。あっ、姉ちゃん余計なこと言うなよな!」
何やらにやにやと笑みを向けられてしまい、菜子はへらりと笑みを浮かべるしかなかった。
レオに比べると、ずいぶん小さい。女性なのだから当たり前なのだとは思うけれど、ぎりぎり平均くらいの身長があるかないかくらい。
顔の造りこそ似てはいない印象だが、整っているという意味ではやはりそっくりだ。
しっかりしていそうなレオの姉。きっと弟に世話を焼いているのだろうな、とその光景がすぐに浮かんできて、なんだかじんわり心が温まるようだった。
「えっと、何ちゃんだったかな。初めましてね。カンナといいます。いつもレオと仲良くしてくれてありがとう」
「あ、葉山菜子といいます。初めまして。こちらこそレオくんにはお世話になってまして……」
「ふふ。ずいぶんしっかりした子なのね。菜子ちゃん、レオ煩いでしょ。ばかだし」
「えーっと……。そうですね、成績は確かに褒められるものではないかもしれないですけど」
「ほら、レオ、言われてるわよ」
「うるさいなっ」
「でも頼りになりますよ。明るいですし、いろいろ助けられてます」
「……だって、レオ」
「……姉ちゃんのくそばばあ」
ぼこっと鈍い音が、レオの頭から鳴り響いている。カンナがレオの頭を叩いていたからだった。
弟が口答えして、それを諫める姉の構図に見覚えがあって、菜子は耐えられず笑い声をあげてしまった。
「あ! すみません、ばかにしたわけではないです!」
ぺこりと頭を下げる菜子に、「いいのいいの」とカンナが言ってのけた。
レオの耳をちぎれんばかりに引っ張って、気にしないでと言ってみせるような素振りが、とても優しい人なのだということが窺えた。
家族仲がいいのだろう。微笑ましく思えるのは当然のことだった。