偽りのヒーロー



 さすがプレゼント用にと手慣れたラッピングは、甘い匂いを漂わせながら素朴なのに洗練されている包みが目を惹くものだ。

 周りの目を気にしながら、人気の少なくなった教室でレオにそれを手渡すと、嬉しそうに笑みを向けるのがわずかに罪悪感を感じさせる。



「もらったやつね、使ったよ。泡のやつ楓に大好評だった。私もあれ一番好きなの。ありがとね」



 お礼と一緒に述べた感想を、食い入るように聞いてくるレオに、菜子は苦笑してしまった。

菜子から受け取ったそれを抱きしめるように持つものだから、「さすがに冬でも溶けるって」と肩を揺らした。



 じーっとそれを見つめるレオが予想外に言葉を発せず、かすかに静かな空気が流れていた。

そろそろバイト先に行かねばならない時間だ。立ち上がって帰り支度をしようとする菜子に、レオがふと口を開いた。



「うー、菜子のばかやろー」



 口を開けば悪態をつかれ、菜子はぽかっとレオを小突いた。

身体を丸めて椅子の上で体育座りする様は、大きなレオの身体を必死でさせる椅子がなんとも窮屈そうだ。

うーうーと濁った声をあげて、ぐりぐりと膝に頭を擦りつけている。





「菜子、帰るぞ」



 教室の扉からひょっこり顔を覗かせた紫璃が、怪訝な顔で菜子とレオを交互に見ていた。
帰り支度を終えた菜子が、紫璃のもとへ駆け寄ると、じゃあねと手を振る。

のっそりと動きの鈍いレオは、顔こそあげていなかったものの、手だけをあげてひらひらとさせていた。

苦笑しながら教室を後にした二人の声が、うっすらとレオの耳を掠めている。



「レオとなんの話してた?」

「んー、なんかバカって言われてた」

「なんだそれ。アイツ人のこと言えないだろ」



 くすくすと楽しそうに笑い合う二人の声が耳に張りつくような気がして、レオはふるふると頭を振っていた、放課後の教室——。



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