偽りのヒーロー
「ありがとう。私全然気が利かなくって」
手に持ったトレイを、レオが使用していたであろうトレイの上に重ねて置いた。
トレイの上に飲み物やら食べ物やらを食していたはずなのに、テーブルの上のあちらこちらに水滴や食べカスが零れていた。紙ナプキンでそれらをふき取って綺麗にすると、満足気に菜子は腰を下ろした。
「や、別に。お前全然気づいてなかったもんな」
「申し訳ない……」
「どっか遊びに行くとこだった?」
「ううん。菖蒲がバイトまでちょっと時間あるから、近くの公園にでも行こうかって話してて」
ずずっとウーロン茶をすすると、結城は「ならよかった」とストローをくるくるとまわしていた。
結城は気が利く人なのだなと、菜子は感心の目を向けた。ガラスに張りついたレオの勢いに驚き、不審者かと焦ったのが申し訳ないくらいだ。結城の自然なアシストは、ぜひとも取り入れたいものだと、もぐもぐハンバーガーを口に入れた。
「今日はレオと一緒なんだね。てっきり彼女と一緒なもんだとばかり思ってた」