偽りのヒーロー
action.30
3年生になった頃。就職組は7組へと振り分けられた。3年7組立花レオン。
好きな人とはずいぶんと遠くなった教室に、虚無感を抱かずにはいられなかった。
同じクラスであることが、どれだけ恵まれていることかなんて、気づきもしなかった。
朝教室に入った時の、おはようと笑う声も、5分休みの終わり際に慌てておにぎりを口の中に詰め込むところも。開けた窓から、ふわりと香る柔らかい匂いも。
当然のようにあったはずのものがなくなった今、学校生活がただただこなすものになりつつある。
桜が散って、緑の葉っぱが生い茂る4月。
恋心は党の昔に無惨にも散ってしまったというのに、諦めもついていない、どうにもできない男である。
2年生の冬、レオは友人の紫璃の浮気現場らしきところを目撃してしまった。
女性と二人で仲睦まじげに歩いている。到底菜子に向けた甘くとろける顔ではないが、優しさを含んだその笑みは、ただの友人でないことはすぐにわかった。
問い詰めてみれば、狼狽えると思っていたその忠告に、ただ真っ直ぐな目を向けていた。
「俺、菜子に好きって言ったんだ」
その言葉には、反応を見せていた。
レオが菜子に告白したという事実よりその前後の、「菜子が紫璃を大事」だと言ったことに、紫璃の整った顔が崩れていた。
紫璃の隣を歩いていた女性のことはわからない。
けれど、自分の言葉など、何一つ二人の関係に傷のひとつもつけられていないようだった。