偽りのヒーロー



 紫璃に、菜子に告白したことを打ち明ければ、その週末。休日にでもデートをしていたのだろう。
週明けに登校していた、菜子の首元に赤い花びらが散っていたのだから。



冬になって、下ろすことが多くなったその髪も、何かの仕草で首もとがちらりと見えることだってある。

それも自分が菜子のことをずっと見ていたからかもしれないけれど、首に散った痕を見たときはもう、頭の中が真っ白になっていた。






 同じクラスであることはときに残酷だ。他愛ない変化も見えてしまうのだから。

それでも笑みを浮かべる菜子の顔から、目を逸らすことはできない。
「レオ」と呼ぶ声、微笑む顔、全部、全部、見ていたい。



 まあ、仲睦まじくやればいい、なんてやけくそみたいな決心は、ものの数秒で打ち破られたけど。諦めるとか、そんな言葉で簡単に片づけられるものではないのだ。



春休み、家でゴロゴロとして毎日のようにいじっていた携帯には、



初恋 実らない  友人 好きな人  三角関係 結末



 どこぞの女々しい乙女なのかと思うような、キーワードが並んでいた。


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