偽りのヒーロー
「まあ、それはレオのこと好きだからじゃない」
素っ気なくいってのけるのは、おなじみ未蔓との帰り道。紫璃と別れた今、その帰路を歩く道は一人になってしまっていた。
けれどそれも時間が経てば、以前ように時間が巻き戻っていたみたいに、未蔓と歩いている。
示し合わせたわけでもない時間。
理系、文系とクラスは違えど、進学クラスといい一つの括りは、照らし合わせたように授業も補講も時間が同じになっているようだ。
紫璃との別れという大一番を迎えた今、新たにできたその悩みをやんわりと相談してみれば、あっけらかんと言われてしまった。
「俺は、嫌いか好きかとだと思うから」
「……極論だね」
好き嫌いのはっきりとした未蔓らしい、その言葉。
極論だけど、間違いじゃない。間違いじゃないけど正解じゃない。
だからこうして、相談してはみたものの、解決の糸をたぐりよせることはまだできていない。
6月も後半になると、むせかえるような暑さが、初夏を連想させている。
梅雨明けはまだなのにも関わらず、青空が広がる道を、途中で買ったコンビニのアイスを食べながら歩いていた。
時折ふわりと吹きすさぶ風が、まとわりつくように絡みつく。心地いいはずの風は、今はまったく心地よく感じられない。
とことこと歩いていた隣に、いつの間にか未蔓の姿が見えなくなっていた。
歩みを止めていた未蔓のもとに戻ってみれば、「菜子」とアイスから口を話して、口を開いた。
「好き」