偽りのヒーロー



「……レオ。ほんとに、ごめん。それならちゃんと言う」

「何……」

「レオのことは好きにならない」



 ドン、と大きな音が、夜空により一層大きな花火を咲かせていた。

恋人だったら、きっとロマンチックな瞬間なはずなのに。

大きな音がかき消してくれたらよかったのに、その言葉だけを切り取ったようにレオの耳こびりついていた。



「私のこと、高飛車な女って思ってくれてもいい。好きになるのは、もうやめて。レオの気持ちには、応えられない」



 はっきりとした菜子の言葉が、嫌が応でもレオの胸に突き刺さる。泣いて赤くなった目が、しっかりと見開かれて、レオの姿を映し出す。



「無理なら話したりはできない。こうやって、レオと向かい合うのも、できない」

「……俺は」

「……レオ。私は何度も言わない。……わかってくれる?」



 いつしかレオが、菜子に告白した言葉。しっぺ返しのように返ってきたそれに、何もいい返すことができなかった。



 1センチも、1ミリも。入る隙間すら与えない、菜子の言葉。——その日から、本当に、菜子はレオと言葉を交わさなくなった。



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