偽りのヒーロー
誤解、嫉妬、それ以外も、全部。俺が勝手に疑った一人相撲だったことを知った。
りん香のことをこっそり嗅ぎまわるように探っていたのかと思っていたけれど、聞いてみれば、それは逆だった。
菜子はなんにもりん香のことを探ってなんかいなかったし、それどころかりん香が菜子のことを気にしているようだった。
自分で言うのもなんだけれど、りん香は俺のことを好いている。
確信したのは、冬のあのとき。せめて中学のときに言ってくれたらよかったのに、と思っていたら、バカな行動に出たのは自分だった。
りん香が嫌われる理由は、二つ。
その愛に飢えたことからの簡単に肌を重ねてしまうことと、二つ目は純粋にその性格。
菜子のことだって、俺がつき合って、しかも結構、長いこと。そんな紫璃の彼女って誰なんだ、と思った好奇心からのことだったようだ。
ひっかきまわしてたのは、菜子なんかじゃなくて、りん香で。それは俺も同罪だ。
一年の、体育祭のときに菜子にベタベタしてた3年の先輩が同中なんて知らなかった。姉の同級生のはずなのに。
それほど人に興味がなかったといってもいい。それが菜子に好意を抱いてから、変化したのも現実だ。そのおかげで、弱くて誰かに縋りたいりん香が、自分を選んでくれたことに、応えたくなってしまった。
菜子は、大丈夫。アイツは、強いから。
別れるときだって、なんにも不満を言わないで、最後まで俺に本心を何ひとつ見せてくれなかった。
そのせいもあるかもしれない。
夏祭りで、小さく揺らした肩が、ようやく本心を見せてくれて。本当に、俺のことを好きでいてくれたなんて、ようやく、別れてから気づいてしまった。
タイミングが悪すぎやしないだろうか。
動揺を隠せずにその肩を掴んで引き止めれば、レオに縋った手が力なく、でもしっかりと握りしめられていて、頼られているレオが妬ましい、なんていうのは自分の胸の中だけに留めて置こう。
菜子にはちっとも敵わないけど、今できる俺の懺悔だ。