偽りのヒーロー
そんなのわかっていた。
つき合ってるのだって、菜子と紫璃の近さだって、嫌が応でも知っていたのに、はっきりと拒否の言葉を突きつけられたら、目の前が真っ暗になった。
「無理なら話したりはできない。こうやって、レオと向かい合うのも、できない」
「……レオ。私は何度も言わない。……わかってくれる?」
わからないよ。俺には全然。
そうやって、はっきり告げる菜子の顔は、へにょ、と笑った顔でもなく、呆れて八の字に眉を下げるでもなく。ただ真っ直ぐに、俺のことを見ていた。
本当に喋らないし、目も合わせてくれない。
ああやって、紫璃のことでぼろぼろ泣いていたくせに、未練を残して別れたくせに。
気づけば顔を見合わせて笑ってるなんて、ばか、みたいだ。
友達に戻れば、話だってしてくれるかもしれない。
気持ちがもう菜子に向いてないよ、って証明すれば、目を合わせてくれるかもしれない。
菜子と話せなくなってから、菜子が笑顔を見せてくれなくなってから、もう、どれくらい経ったんだっけ。菜子がいないと、抜け殻になったみたいだ。
それでも学校に来て勉強して、就職だって内定が出て、関係ないみたいに毎日が過ぎるのが、いやだ。