偽りのヒーロー
寒さの厳しかった冬も終わり、桜の花が咲き始める季節となりました。空を飛び交う小鳥のさえずり。やわらかな風の流れ。学校を見守る沢山の木々——……
同級生の生徒会長の任をこなしていた生徒の答辞。ずず、っと鼻をすする生徒もいるのに、どうもこうして眠気を誘う。
ようやく迎えた卒業式も、3年前と何変わっていない。
新たにできた親友。さらに絆の増した幼馴染。
家族の失った悲しみから立ち上がれた日々。
その手を放すのが、苦しくなるほどに好きだった初恋の人。そして、新たにできてしまった好きな人みたいに気になる友人。
「どうしようもないな、私は……」
呟いたそれは、強がった菜子の一言。
本当に、全然変わってない。そうやって、この気持ちが薄れゆくまで、自分の中にしまっていくのだ。
「菜子! 菜子は!?」
「……もう帰ったわよ。一之瀬くんちと一緒にレストランでお祝いだって」
まだ冷たい風が吹きすさぶ晴れ渡った空。こんなにも卒業を祝う綺麗な空は、今のレオの気持ちをあざ笑ってるみたいだった。
「……中途半端にされなくてよかったじゃない。立花、就職してもがんばれ」
優しい菖蒲の言葉は初めての。慈愛に満ちた、終わりを告げるその言葉。
「……がんばるよ、俺は」