偽りのヒーロー
action.6
始業式、夏の日差しで黒く日に焼けた同級生が目を見張る。
ちょっと大人びた雰囲気になった子や、スカートが短くなった子、ちょっと髪の色が明るくなった子。
夏休み明けは、多様の変化が菜子には輝かしく思える。
昔から、日差しを浴びても黒くならない、赤くなったらいつの間にか白く戻る菜子の肌を見て、レオがセーラー服の半そでをひらひらとシャーペンで仰ぐ。覗き込まれた二の腕を、菜子はぺしんと手を叩いてあしらった。
「そういや昨日のパンダの写メ、なんか微妙だった。意外と茶色くて」
毎日のように送られてきていたレオの写真に、菜子はケチをつけた。
街中で会って何度か遊ぶこともあったのだが、それ以上に毎日の連絡のおかげで、学校にいるときのようにレオに会っている気分になった。
レオは菜子のメール無精にも関わらず、返信がないのにもめげずに立て続けに連絡をしてくる。急用のときだけは、「至急!」とか「何時に電話する!」とか、わかりやすく伝えてくれるのには有り難いところである。
特別用事があるわけではなく、なんとなく連絡するのが癖になっているのだと思う。道端の花の写真や、散歩している犬の写真、挙句の果てには毎日夕食の写真を送られてきた日には、日記を読まされている気分になった。
「だよなあ! 他のやつに送っても可愛ってしか言わないんだよ〜」
頭の後ろに両手をあてて、口を尖らせている。
くすんだ茶色いパンダや、ギョロ目の小型犬、或いはおじさんみたいな顔をした猫のことだろうか。レオから送られてきた数々の写真を、頭の中で巡らせるも、手放しで可愛いと思えるものは少ない。「かわいい……?」と、菜子は訝し気な顔を向けた。