偽りのヒーロー
「学校の近くにあるんだぜ」と、レオから聞いた道のりを、ゆっくりと歩いていた。
説明を受けた道は、携帯で確認した上に、助言してくれたレオ本人に何度も確認をしたはずだった。
『信号を右に曲がって、バッて行ったらシュッとしたところにあるから』
そういうレオの説明は真に受けてはいけないものだったかもしれないと、今になって菜子は後悔していた。
わけのわからない曖昧な目的地までの説明は、方向音痴な菜子にしてみれば、なんとも過酷な試練にも感じられる。しきりにまわりを見渡しながら、合っているのか間違っているのかもわからない道をうろうろと往復する。
「こんなことなら、先に帰ればよかった」
隣を歩いていた未蔓が、盛大なため息をつき、文句をたれていた。
通学路に使わない道を右往左往としてしまい、今にも心が折れそうだ。
張り切って学校を飛び出してきたところまではいい。一緒に帰ろうと教室に来た未蔓に、「ちょっとつき合って」と張り切って連れ出したところまでは、何の問題もなかったはずだ。
意味もわからず、ずんずん歩みを進める菜子の後ろを黙々とついてまわるだけの未蔓が、不満を口にしたのは、同じ道を何度か通った後だった。
「……私も泣きそうだよ……。ここどこだろう……」
地図のアプリを駆使したせいで、画面上部の電池のマークが赤くなっている。今にも充電の切れそうな熱く熱を帯びた携帯を、菜子はぎゅっと握りしめた。
応答しなくなった携帯は、いつの間にか真っ黒くなっていた。黒くなった画面を見つめると、情けない菜子の顔が写し出されていて情けない。
買い物すらままならない高校生なんて、どこにいるのだろう。未蔓を連れまわした挙句、迷惑をかけて。
本当に、なんだかもう散々だ。そんなことを口にするのも憚られて、黒くなった画面が歪む。