偽りのヒーロー
「これ綺麗」
「うわあ……! 本当だ……!」
ぽつりと呟く未蔓の視線の先のケーキ。
花びらに見立てて盛り付けられたフルーツは、本物と遜色ないくらいに艶やかだ。繊細に盛り付けられたフルーツに、本物らしい花びらが散りばめられており、菜子はそのケーキに釘付けになっていた。
「食用花なの。うちの人気商品よ」
にっこりと微笑む先輩に、菜子はキラキラした笑顔を向けた。ふふ、と微笑む先輩にを尻目に、ケーキに目を奪われ会話も疎かになる。
「……でも楓はこっちのがいいよね?」
キャラクターの顔をしたケーキを指さして、未蔓の顔を覗き込む。未蔓もレオも大好きなナイトレンジャー。
正義を背負う朝の戦隊番組を、楓がいつも前のめりで鑑賞しているのは、菜子は当然目の当たりにしている。
母の好きそうなケーキだな、と少し思ってしまったことは言葉にしなかった。
楓の誕生日なのだから、楓が一番喜ぶものがいい。