犬と猫


あたしは知らない。


そう思い、狸寝入りを決め込んだ。





「田嶋さん!ご飯!食べましょ?一緒に!」


いつの間に来たのか、その声は耳元の近くで鮮明に聞こえた。







が、勿論無視。



「たーじーまーさーんー!」

あまりの放置に駄々を捏ね始めた。



「俺、お腹すきましたー!起きてくださいよ!」


「うるさい、うざい、帰って。」


「田嶋さんが起きてくれた!」


わーい、とか喜んでる声が聞こえる。
そう、ご主人様によしよししてもらえた犬のように…。



ダメだ。
このままじゃあたしが変な目で見られる。


狸寝入りをやめて立ち上がる。

「えっ?田嶋さん?」

「あんた、なんなの?鬱陶しい、うざい。……ほっといてよ。」



そう言って教室を出た。

…なんで学校にまでこんなことになるのよ。





「もう、疲れた。」


そんな心の声は誰にも届かないのを分かっていながら呟いていた自分がいた。

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