お月見泥棒
 固まっている三人に、女人はにこりと笑いかけた。

「お月見泥棒に来るのは、狐だと聞いてるわ。あなたたちも狐なのでしょう?」

「う、うん、そうだよ!」

 やけくそ気味に、伸太が答える。

「小母(おば)ちゃん。小母ちゃんが庄屋さんの新しい奥さんなの?」

 喜助が、じ、と女人を見上げながら言った。
 それに、ふふ、と女人が笑う。
 女人の傍らでは、良く似た小さな女児が、じっと三人を見ていた。

「お、お月見泥棒は、見つけても知らんぷりをしないといけないんだよ」

 融が言うと、女人は、あら、という風に、口に手を当てた。

「だって、どんな狐さんが来るのかと興味があったんですもの」

 そう言って、女人は空を見上げた。
 雲がかかり、月は見えない。

「無月ね。ふふ、それもまた良し」

 さぁっと、生ぬるい風が吹き抜ける。
 何となく、三人は顔を見合わせた。

 今何か、妙な臭いがしなかったか?
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